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更新日 2017-10-25 | 作成日 2007-09-13

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松枯れについて

茂樹園がある長崎では、昭和40年ごろに大量に松枯れが発生していたそうですが、ここ数年、近所の山や庭で、松枯れが大変増えてきました。原因は俗にいう松くい虫で、正式にはマツ材線虫病です。このマツ材線虫病は、昨今日本中で問題となっていてます。


松枯れの歴史

マツ材線虫病

IMG_0008.JPGマツノマダラカミキリ 今現在、日本中で問題になっている松枯れはマツザイセンチュウ病といって、マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウが原因です。

 このマツ材線虫病は約100年前の1905年に長崎で枯れたものが日本で最初といわれています。当時は原因であるマツノザイセンチュウはまだ発見されておらず、松枯れの様子の詳細な記録から、症状が一致していることから、現在の長崎市茂木町で枯れた松が日本で最初とされています。当時の事情を考えれば、長崎に出入りする外国船の積み荷の梱包材として松材が使われていただろう事も想像できるし、実際クローバー(シロツメクサ)なども本来は干し草を緩衝材として使っていたことから日本に入ってきている。その後、1914年〜1915年には兵庫県赤穂市でも被害が発生し、以後西日本に広がっています。最も被害が深刻になったのは、昭和40年代に北海道・東北地方を除いて全国的に被害が広がりました。

DSCF1682.JPGマツノザイセンチュウ 実体顕微鏡40倍DSCF1712.JPG顕微鏡200倍 もともと日本にはニセマツノザイセンチュウという在来種がいますが、マツを枯らすほどの力はなく、何らかの原因で弱ったマツに寄生していました。またマツノマダラカミキリも健全なマツには松脂による防御力により産卵できず、枯れかかったマツにしか産卵していませんでした。
 長崎の地でマツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウというベストパートナー?を得て、この日本に猛威を振るうことになろうとは・・・

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マツ枯れのメカニズム

IMG_0010.JPGマツノマダラカミキリの後食痕 マツノマダラカミキリは、6月ごろに成虫になり、発生し始めます。成虫になったマツノマダラカミキリはマツの新梢の樹皮を食べます。これを後食といいます。この後食の時にマツノマダラカミキリの体にいたマツノザイセンチュウが這い出してきて落ちて、後食時の傷から松脂の中を泳いでマツの樹体内に侵入します。マツノザイセンチュウはマツの樹体内で増殖を繰り返し、樹脂道を通って樹体内に広がっていきます。マツノザイセンチュウが侵入したマツは7月ごろまでは、葉色にもそれほど変化はなく、一見すると健全木と同じように見えます。しかし侵入して1週間後には、幹を傷つけたり、枝を切っても松脂の分泌がなくなります。さらに1ヶ月ぐらいすると通水組織に気体が入り込むキャビテーションという現象がでて、根がら葉へと水を吸い上げる機能を低下させ葉が萎凋(葉が萎れること)してきます。
DSCF1722.JPGマツノマダラカミキリの産卵痕DSCF1731.JPG材内のマツノマダラカミキリの幼虫 マツノマダラカミキリはマツの新梢をかじって成熟していき、匂いを頼りに8月ごろから弱ったマツの木に産卵します。この時には松脂も出ず、穿孔性害虫に対する防御力もなくなっています。マツノマダラカミキリの幼虫は内樹皮を食べて成長し、寒くなってくると材内に孔をあけて蛹室をつくって越冬します。
DSCF1718.JPGカミキリの脱出痕 マツノマダラカミキリが羽化する頃になるとマツノザイセンチュウは蛹室の周囲に集まってきます。マツノマダラカミキリが羽化するとマツノザイセンチュウはカミキリの気門から体内に入り込みます。マツノザイセンチュウはカミキリに寄生するのではなく、ただ単に自らの分散のためにカミキリの体内にいるだけです。マツノザイセンチュウを体内に抱えたマツノマダラカミキリは脱出し、また後食をはじめ、マツノザイセンチュウが新たなマツの木に寄生していきます。

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マツ材線虫病の防除法

 マツ材線虫病の防除としては大きくは3つになります。
DSCF1757.JPG樹幹注入 まず第一の方法として、マツノザイセンチュウが樹体内に侵入しても中で増殖できないように、あらかじめマツの木全体に薬効成分を行き渡らせておく方法で、樹幹注入と呼ばれています。多くの樹幹注入薬の薬効は約3〜4年ぐらいとされており、その期間ごとに行う必要があります。


 次に第二の方法として、後食のために飛来したマツノマダラカミキリを殺虫剤で駆除する方法です。後食を防ぐことで、マツノザイセンチュウが樹体内に侵入する機会をなくすことになります。この場合はカミキリの発生初期に行う必要があり、マイクロカプセル剤などの薬効が数ヶ月あるものを使用すると効果的です。
DSCF1766.JPG伐木の燻蒸処理 最後に第三の方法として枯れてしまった木を伐採・処分し、他のマツの木への被害の拡大を防ぐ方法です。いったんマツノザイセンチュウが侵入してマツ材線虫病を発病すると回復することはなく、そのまま放置しておくと翌年、他のマツへと被害が広がっていきます。そこでカミキリが脱出する前の3月ごろまでに枯死木を伐採し、焼却や薬剤処理、チップ化するなどして処分することが必要です。第一、第二の方法も有効であることはもちろんですが、枯れてしまったマツを伐採し、的確に処分することが、被害の拡大を防ぐ基本とされています。

DSCF1727.JPGオオコクヌスト その他の方法としては、マツノマダラカミキリの飛翔距離が約2kmであるため、未感染地を守るために周囲2km以内のマツの木を皆伐してしまう方法があります。また天敵動物としてオオコクヌストなどの昆虫類やアカゲラなどの鳥類が知られています。しかしオオコクヌストはマツノマダラカミキリの幼虫を選択して捕食するわけではないらしく、今一つ実効性に欠けるようです。アカゲラなどのキツツキ類は高い確率でカミキリの幼虫を捕食できるそうです。ただし、カミキリが産卵して幼虫になるまでにはマツの木は枯れてしまうことには変わりなく、マツ枯れの抜本的な対策とまではいえないようです。

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